田舎の実家が売れない。そんなときどう対策するかをプロが解説

田舎の実家が売れないのは価格の問題だ……とは言い切れません。

再建築不可や接道不足、残置物、固定費の負担、相続登記が行われていないこと、地域需要の低さなどが複合的に影響しています。

例えば、接道義務を満たさない土地は仲介ではなかなか売れず、買取専門業者に依頼しても相当な安値になることが一般的です。

国土交通省の調査では、空き家の47%が室内外に腐朽や破損があることがわかっています。これも、田舎の実家が売れにくい原因といえるでしょう。

こうした現実を踏まえ、まずは接道状況、相続登記、残置物を確認し、地元の信頼できる不動産会社を探すコツをお伝えします。

田舎の不動産には都会とは違うノウハウが必要です。

制作・監修者について
アップライト合同会社の編集部が制作(監修は宅地建物取引士・立石秀彦)。不動産の調査・マーケティングを専門とし、複数の不動産メディアを運営しています。

目次

まず確認する3つのポイント

田舎の実家をどうするか? 処分の方向性を決める前に以下の3点を確認すると「仲介向き・買取向き・法的整理が先」に仕分けができます。なお、自分で調べるのが難しいと感じた場合は、仲介不動産会社に依頼するのもひとつの手です。

① 接道しているか

建物の敷地が、幅4m以上の道路に2m以上接しているかどうかです。接道していない(または接道が不十分な)場合、建て替えができない「再建築不可物件」になります。仲介での売却は極めて難しくなり、買取専門業者か隣地への交渉が現実的なルートになります。接道義務について、詳しくは以下の記事で解説しています。

建築基準法42条をわかりやすく解説|道路種別と接道義務の調べ方(私道ラボ)

② 相続登記は完了しているか

親名義のまま変更していない場合、処分の前に相続登記(名義変更)が必要です。なた、令和6年(2024年)4月から相続登記が義務化(不動産取得を知った日から3年以内)されています。10万円以下の過料が課される可能性もあるので注意してください。

未登記の状態では、空き家バンクへの登録も、国庫帰属制度の申請も、自治体への寄付も手続きが進みません。

相続登記について、詳しくは以下の記事で確認してください。

家の名義変更(相続登記)は死亡後いつまで?義務化の期限と罰則を解説(ウルズンMAGAZINE)

③ 残置物はあるか

家財道具や荷物がそのまま残っている状態は、買取でも仲介でも売却価格が安くなります。残置物の処分費用は売主負担になるケースもあり、売買価格から差し引かれる可能性があるからです。

田舎の実家売却はどこに相談すればいいのか

田舎の不動産を売る場合、最初の相談先は地元の不動産仲介業者です。

理由は2つあります。エリアごとの相場は、現地に近い業者ほど精度よく把握しています。それから、再建築できるかどうか、どんな建物が建てられるかといった建築基準法上の判断は、都道府県や自治体の条例で細かく規定されているのが一般的。遠方の業者だと、その条例の実態を正確に把握していないケースも出てきます。地元で、そのエリアの法令に詳しい業者を選ぶことが基本です。

「司法書士への登記相談が必要」「境界が不明なので土地家屋調査士に測量を依頼したい」といった場面も出てきますが、状況に応じて不動産業者が専門家人材を紹介してくれます。仲介業者を窓口にして、必要に応じて専門家につないでもらう流れが最も効率的です。

地元業者をどうやって探すか

都市部に住んでいて遠方の実家を相続した場合、どの業者が信頼できるかの判断が難しくなります。そのときに利用したいのがGoogleマップです。

調べたいエリアをマップで開き、検索窓に「不動産会社」と入力します。まず、表示された業者を1件ずつ開いて口コミを確認していきます。このとき、並び替えを「評価の低い順」にしてください。高評価の口コミはどの業者も集めているので、差がつきにくいからです。悪い口コミの中身をチェックすると、その不動産会社の実態が見えてきます。

1〜2件の低評価は気にしなくていいでしょう。ただ、悪い口コミが複数あって、内容が共通しているようなら避けた方が無難です。このように、消去法で外れをつかむ確率を減らしていくのが現実的です。

口コミの内容の選別方法

口コミの内容も確認してください。売却したいのに賃貸管理の口コミばかりという業者は、売買が得意とは限りません。

口コミがゼロの業者は、判断基準がないので避けた方が安全です。普通に営業していれば口コミを集めることは難しくありません。筆者は「口コミゼロというのは何かが欠けているサイン」だと思っています。

知人に「いい不動産会社知らない?」と聞くのも手ではありますが、相手が不動産の専門家でなければ、素人が素人に聞いているだけです。あまり効率が良くないと感じます。

仲介で売れない場合は買取も選択肢に

地元の仲介業者に依頼して、それでも2〜3年動かないようなら、買取専門業者への切り替えを検討してもいいかもしれません。ただし買取価格は、一般的な相場の5割から7割程度になることが一般的。仲介手数料が不要になるとはいえ、そもそもの買取価格が安いので、手数料分ではとても相殺できません。「早く手放すことを優先する」と決めた場合のみ選ぶ手段です。

なお、不動産買取を利用する前に、以下の記事を参照してみてください。

「どんな家でも買い取ります」というサイトは利用してもいい? 危険なポイントは?(ウルズンMAGAZINE)

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売れない理由は「採算」の問題かも?

「少し安くすれば売れる」と考える方もいます。しかし田舎の物件は、価格の問題ではなく、採算の問題で売れないケースも多いのが実態です。

買主(不動産投資家や買取業者)は、物件の購入価格を「いくらで売れるか」から逆算して決めます。式にするとこうなります。

買付価格 = 想定売却価格 ー 解体費 ー 測量費 ー 登記費 ー 諸経費 ー 利益

たとえば、更地にして売却できる想定価格が300万円だとします。

木造40坪の解体費が約200万円(坪単価3〜5万円が相場で、40坪なら120〜310万円程度)。境界確定測量費が約50万円(相場は30〜80万円程度)。登記費用が約10万円。諸経費が約30万円。業者の利益が約150万円。

計算するとこうなります。

300万円 ー 200万円 ー 50万円 ー 10万円 ー 30万円 ー 150万円 = マイナス140万円

買付価格がマイナスになる。つまり「0円で譲渡されても、引き取った瞬間に赤字」という状態です。売主がいくら値下げしても、解体費と測量費は変わりません。この2つが「全国ほぼ一律にかかる固定費」である点が、田舎の物件を特に難しくしています。

都市部であれば土地の売却価格が高いので、解体費200万円は吸収できます。しかし田舎では土地の出口価格が低いため、固定費がそのまま採算を食いつぶしてしまうのです。

多くの物件が要修繕状態なのもマイナス要因

建物の状態も問題です。国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」によれば、空き家の47%程度が「室内外に部分的な腐朽・破損あり」という状態にあります。腐朽・破損があれば、リフォームして再販するにも数百万円以上の修繕費がかかります。解体して更地にするにも解体費がかかる。どちらに転んでも採算が合わないというのが、田舎の物件の実態です。

さらに、再建築不可物件(接道義務を満たさない物件)は、周辺の土地と比較して評価額が約3割程度まで下落するのが不動産鑑定実務上の目安です。住宅ローンの審査も通らないため、現金で買える投資家や専門業者だけが相手になります。買手が絞られる分、価格はさらに足元を見られます。

「安くすれば売れる」というのは、採算が合うエリアでしか通じない理屈なのです。

仲介か買取か、判断の分かれ目

まず仲介で売り出すのが基本です。

買取業者は「仲介手数料が不要な分お得だ」と宣伝しますが、買取価格は相場の5割から7割程度になることが一般的。仲介手数料はせいぜい3%程度ですから、それが不要になってもとても割に合いません。

田舎の物件は売却期間が年単位でかかることが普通にあります。都市部の一戸建ては半年から1年が売却の目安と言われますが、田舎では2〜3年かけて売るケースも珍しくありません。

「3年仲介で粘る」というのも、特殊な戦略ではないのです。

ただし、以下のような状況であれば、早めの切り替えを検討してもいいでしょう。

  • 売り出して1年程度、反響がまったくない
  • 管理の手間や固定資産税の負担が重くなっている
  • 相続人間で早期決着が必要な事情がある

相場に近い価格で売りたいなら、1~3年程度は仲介で粘る必要があります。一方、早く手放すことを優先するなら、買取も現実的な選択肢になります。どちらが合理的かは、物件の条件と売主の事情次第です。

売却にどれだけかかるかはエリアによって大きく違います。見通しは、その土地に詳しい地元業者に直接聞くのが一番正確です。

解体して更地にするべきか

田舎の物件の解体は慎重に判断

「とりあえず解体して更地にしよう」というのは、田舎の物件では裏目に出ることがあります。

解体したほうが有利なのは、土地の需要が強いエリアです。

新築を建てたい買主が多い地域では、古い建物が残っていると足かせになる傾向があります。また、土地価格が高いエリアでは「高い土地には新しい建物を建てたい」という需要が自然に生まれます。こういった場所では、解体費を出して更地にすることで、売却が早まる効果が期待できます。

田舎はその逆です。

古民家や古い家を探している買主は一定数いますが、「更地だから欲しい」という人はそれほど多くありません。むしろ「土地が安くて、古い建物もついてくる」ことが魅力になるケースもあります。

固定資産税が上る可能性も押さえたい

もうひとつ、見落としがちな問題が固定資産税。

建物が残っていると「住宅用地特例」が適用され、固定資産税が大幅に軽減されています(小規模住宅用地は評価額の1/6、一般住宅用地は1/3)。解体して更地にすると、この特例が外れ、税額が跳ね上がります。建物があれば年3万円だった固定資産税が、更地にしたら10万円近くになった、というケースは珍しくありません。

さらに、解体費だけでなく造成費がかかる場合があります。壊すついでに整地しようとすると、想定外の出費になることも。解体前に再建築できるかどうかの確認も必要です。

そのため「解体すべきかどうか」は、一言では答えられないのです。

その土地の需要動向、土地価格の水準、固定資産税の額、再建築の可否、これらを総合して判断する必要があります。

まず仲介を依頼している業者に相談してください。更地の方が売りやすいのか、建物が残っている方がいいのか、地元の動向を知っている業者なら判断できます。固定資産税の試算や再建築の確認も、依頼すれば調べてもらえます。解体の判断は、その確認が終わってからで十分です。

売る以外の手段とその実態

「売れないなら空き家バンクに登録すればいい」「自治体に寄付すればいい」「国庫帰属制度を使えばいい」——そう考えるかもしれません。

しかし、それぞれに使えない条件があります。

空き家バンク

国土交通省が推進し、全国の自治体が運営する「マッチングプラットフォーム」です。売主と買主・借主をつなぐ情報掲示板であり、自治体が直接買い取る制度ではありません。

しかし、老朽化が著しい物件、山間部でインフラが乏しい物件は、登録しても問い合わせがゼロというケースが普通にあります。売れない理由が「買い手の採算が合わない」という問題である以上、登録しても状況は変わりません。

自治体への寄付

自治体が不動産の寄付を受け入れることは、実態としてほぼありません。自治体が寄付を受け取れば固定資産税を永続的に失う上に、草刈り・管理・老朽対応のコストが税金で賄われることになります。住民全体の利益に反するとして、原則として受け入れてもらえません

実際、全国市長会の経済委員会による実態調査では、平成30年度に都市自治体が任意の土地寄附を受理した実績は「ゼロ」でした(「民法・不動産登記法部会資料 47 参考資料1 地方三団体提出資料」国土交通省)。 

寄付を断られる典型的な条件はこの通りです。

  • 接道義務を満たさない(再建築不可)土地
  • 境界が確定していない土地
  • 建物(古家)が残っている土地
  • 抵当権や地上権が設定されている土地
  • 土砂災害警戒区域に指定されている土地

田舎の空き家のほとんどは、いずれかに当てはまります。

相続土地国庫帰属制度

令和5年(2023年)4月施行の制度で、一定の条件を満たせば相続した土地を国に引き取ってもらえます。法務省の統計(令和8年4月30日現在)では、申請件数5,421件に対して承認件数は2,681件と、おおむね半数が承認されています(法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」)。

ただし、申請段階で即却下になる条件があります。もっとも重要なのはこれです。

建物がある土地は申請できない。

家屋・倉庫・物置など、建物が残っていると申請不可です(「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」第2章の規定)。自己負担で解体・更地化してから申請する必要があります。他にも、境界が確定していない土地、担保権が設定されている土地、土壌汚染がある土地は申請段階で却下されます。

審査を通過しても、通常の管理に過分な費用がかかると判断されれば不承認になります。山林はとくに難易度が高くなります。

必要な費用は2種類あります。

  • 審査手数料:土地1筆あたり14,000円(審査結果にかかわらず返還なし)
  • 負担金:承認後に納付。宅地・農地・雑種地など一般的な地目は原則20万円(市街化区域内の宅地や広大な山林は面積に応じて算定)

(出典:法務省・政府広報 https://www.gov-online.go.jp/article/202303/entry-10064.html

建物解体費・測量費・登記費・司法書士報酬・審査手数料・負担金を合算すると、不動産を手放すために100万円単位の持ち出しになるケースは珍しくありません。「タダで手放せる制度」ではない点は、最初に確認しておく必要があります。

放置すると何が起こるか

「とりあえず今年はそのままに」という判断を何年も繰り返すと、税金と行政上のリスクが積み上がっていきます。

管理不全空家の認定(2023年改正で新設)

令和5年(2023年)12月施行の改正空家法で「管理不全空家」という概念が新設されました(空家等対策の推進に関する特別措置法第13条)。「特定空家(倒壊の危険がある段階)になる前の、このまま放置すれば特定空家になるおそれがある」物件が対象です。

国土交通省のガイドラインでは、屋根ふき材の点検・補修が行われていない、雨水侵入の跡がある、立木の剪定がなされておらず幹の腐朽が認められる、といった状態が認定の対象として列挙されています。

管理不全空家に認定され、市町村長から「勧告」を受けると、次の問題が発生します。

固定資産税が最大6倍になる

管理不全空家として勧告を受けると、住宅用地特例が外れます(地方税法第349条の3の2)。

住宅用地特例の軽減率はこの通りです。

  • 小規模住宅用地(200㎡以下):評価額の1/6 → 特例除外後は評価額の1倍(最大6倍)
  • 一般住宅用地(200㎡超の部分):評価額の1/3 → 特例除外後は評価額の1倍(最大3倍)

例えば、特例適用時に年間3万円だった固定資産税が、特例除外後には最大18万円になる可能性があります。実際には「負担調整措置」により初年度から即6倍になるわけではありませんが、中長期的に見れば最大6倍相当の負担が続きます。

田舎の物件は売却まで年単位かかることがよくあります。その間ずっと高い税額を払い続けることになります。

特定空家になると行政代執行まであり得る

管理不全空家の段階で改善されなければ、やがて「特定空家」に指定される可能性があります。特定空家に対する行政の流れは次の通りです。

  1. 指導(行政指導。法的強制力なし)
  2. 勧告(この段階で固定資産税特例が外れる)
  3. 命令(行政処分。違反すると過料)
  4. 行政代執行(行政が強制解体し、費用を後日徴収)

2023年改正で「緊急代執行」も新設されました。台風や地震の後など、切迫した危険がある場合は命令を経ずに即時代執行が可能です。

相続人が増えると処分はさらに難しくなる

空き家を放置している間に相続が発生すると、共有者が増えます。二次相続、三次相続と重なれば、共有者が数十人になることもあります。

改正民法(令和5年施行)で手続きは一部緩和されましたが、売却などの処分行為には依然として一定の合意が必要です。早く動くほど関係者が少なくて済む。先送りにするほど、合意形成のコストと時間が増えていきます。

まとめ「田舎の実家を手放す前に整理したい判断基準 」

田舎の実家が売れないときは、値下げだけで考えるのではなく、まず「仲介で売れる物件か」「買取に切り替えるべきか」「登記や接道などの整理が先か」を分けて考えることが大切です。

確認したいのは、接道、相続登記、残置物、建物の状態、解体の要否、そして地元での需要。田舎の物件は土地価格が低い一方で解体費・測量費・登記費などの固定費は、都市部の物件と変わらずかかってしまいます。

そのため買主側の採算が合わず、価格を下げても売れにくい場合があるのです。

空き家バンク、自治体への寄付、相続土地国庫帰属制度も選択肢にはなりますが、いずれも使いやすい制度とはいえません。

しかしこの記事を読んだことで、まず何を調べ、誰に相談し、どこで見切りをつけるかの順番は整理できたはずです。

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